「まだら状態や境目の方が多かった」介護者Tさん(40代)
私は「訪問介護ヘルパー」として8年間近く、老齢の方たちのお世話をさせて頂いてきました。
在宅で生活されているという事は、ある程度元気な方が多く、「痴ほう症」という診断がされていても、実際はさほど奇怪な言動だとか、目に見える異常、変わった様子の無い方が多かったです。
後から、「認知症」だと知って「どこが?」と驚くような事も多かったです。
逆に言えば、状態の重い方たちは、老人保健施設に入所されたり、ギリギリまで在宅での生活を行い「これは、危ない」という判断がされた時に施設での生活に切り替えていく事が多いです。
同じ「認知症」でも、アルツハイマー型の場合は、画像でのはっきりとした「診断」がなされるタイプの場合は、わりと年齢が若い方や、症状が分かり易いこともあります。
けれども、「長谷川式簡易スケール」で診断される方の中には、ちょっとした物忘れだとか、同じ話を繰り返すなど、お年寄りであれば、ごく当たり前の現象だよな、という程度なので、この「境目」に正常や異常の判断は難しいな、と思うこと多々でした。
被害妄想のある80歳女性を介護したケース
わりと顕著に症状があった方の中では、「被害妄想」のある80歳の女性Aさんのケースです。
集合住宅に住んでいたのですが、「常に監視されている」と言い、カーテン越しに隣近所の目を気にしていました。
突然、知らない人が家に上がりこんできて、家のものをあれこれ見ていったという話しをたまにヘルパーにします。
それが、「妄想」で、Aさんは疲れてくるとそういう症状が出てくる特徴がありました。
デイサービスを利用していましたが、そこで起きた話しの中に「被害妄想」も含まれていて、繰り言のように同じ話しをします。
妄想が酷くなると「興奮」してしまい、ひと悶着あるという過去のパターンがあり、変わった事が無いかを何気なく見守るというのがヘルパーの仕事でした。
進んだ健忘症状を理解するということ
もう一人、Fさんという男性。
お盆に親戚が集まった時に何か様子がおかしいと気がついた長男のお嫁さんの依頼で介護サービスを利用されました。
こちらの男性は、今あった事も忘れてしまうという症状でした。
必要な書類など、さっと何処かにしまい込み、その場所を忘れてしまい、延々と探しているという事を一日中繰り返していました。
介護者同士で使う「連絡ノート」などは、ばれないように、決まった場所に保管して担当者同士で工夫しました。
近くに買い物に出かけて、迷子になってしまい、住んでいる地域と反対のほうへ行ってしまっていたという事もありました。
Fさんの場合は、冬になり、息子さんが説き伏せて、息子さんの家で同居する事になり、介護は打ち切られました。
認知症のお年寄りは、不安な気持ちを感じているので、その不安を理解してあげられるかどうか、が介護者のポイントとなると思います。
(妄想だと分っていても「そうですよね。」と相槌をうつとか、ものを探していたら「あらら、じゃあ一緒に探しましょう」というような言葉が具体的な理解を示す言動です。)